
教育現場における感性教育の実践|植物との距離を取り戻し、自然体験と対話を通して生きる力を育む
静岡県のこのはな保育園にて、華道家・美榮による花育を実施しました。
本取り組みでは、花を生ける技術指導にとどまらず、園庭の植物に触れ、自ら摘み、自ら選び、生けるまでの体験を通して、子どもたちの感性や主体性、対話する力を育む時間を創出しました。
自然との距離が広がりつつある現代において、花育は、教育現場に無理なく取り入れられる感性教育の実践であり、自然体験を通して生きる力の土台を育む取り組みのひとつであると考えています。

植物との距離が広がる時代に、教育現場で求められる自然体験
現代の暮らしの中で、植物は“買うもの”“飾るもの”“管理するもの”として扱われる機会が増え、子どもたちが自然に直接触れる時間は、以前に比べて少なくなっています。
都市化や生活環境の変化により、季節の移ろいを感じること、香りや質感に気づくこと、自然の変化に目を向けることは、日常の中で得にくい体験になりつつあります。
こうした時代だからこそ、教育現場においては、知識や正解を学ぶだけではない、五感を使って世界を受け取る時間がより重要になっています。
花育は、植物という身近な自然を通して、子どもたちが自分の感覚で感じ、考え、表現する機会をつくる実践です。
「花を摘む」ことから始める感性教育
今回の花育では、最初から室内で花を生けるのではなく、まず園庭に出て、季節の植物を自分の手で摘むところから始めました。
このはな保育園の園庭には、その季節ならではの花が咲いており、子どもたちはその中から好きな花を、好きな量だけ、好きな長さで選んでいきました。
同じ場所に咲く植物であっても、選ぶ花も、摘み方も、一人ひとり異なります。
その違いの中には、すでにそれぞれの感性や個性が表れています。
花を摘むという行為は、単なる準備作業ではありません。
植物を観察し、自分で選び、手を動かし、自然と向き合う。
この一連の流れそのものが、子どもたちの感性の土台を育てる入口になります。
完成形を先に与えるのではなく、まず自然と向き合うことから始める。
それが、美榮が大切にしている花育の根幹です。



正解を与えすぎないことで育つ、主体性と選択力
園庭で摘んだ花を持ち帰ったあとは、自分の手で花を生ける時間へと進みました。
この時間に伝えたのは、技術やルールではなく、花や自然と向き合ううえで大切なごく基本的なことです。
花は、いつか枯れること。
水は、花にとって欠かせない存在であること。
枯れたあとは、感謝を込めて手放すこと。
そして、普段は捨ててしまうペットボトルのような身近な素材も、見方を変えれば作品の一部になるということ。
花育では、「こうしなさい」「これが正解」と先に答えを与えすぎないことを大切にしています。
子どもたちは、目の前の植物を見ながら、自分で考え、自分で選び、自分で決めていきます。
「この花を入れたい」
「この色が好き」
「これくらいの長さにしたい」
その一つひとつの判断は、小さな選択に見えて、確かな主体性の表れです。
情報があふれ、答えが用意されやすい時代だからこそ、幼少期に自分の感覚を信じて選ぶ経験は、教育の中で非常に重要だと考えています。
植物を介して生まれる、自然な対話と関わり
花を生ける時間には、集中力や観察力、表現力だけでなく、子どもたち同士の自然な対話も生まれます。
互いの作品を見せ合いながら、「それいいね」「こっちも見て」と言葉を交わし、それぞれの違いを楽しみながら関わり合う姿が見られました。
植物が間にあることで、評価や競争ではない、無理のないコミュニケーションが育っていく。
これも花育の大きな特徴のひとつです。
教育や保育の現場において、表現活動は自己肯定感や他者理解にもつながる大切な機会です。
花育は、植物という身近な自然を媒介にしながら、感性だけでなく、対話や関わる力を育てる実践でもあります。

現場の声から見えた、花育の可能性
花育の終了後には、園児たちからお手紙をいただきました。
「たのしかった」
「これからも おはなのおせわを がんばる」
そうした素直な言葉に、この時間が子どもたちの中にしっかり残っていることを感じました。
また、先生方からも丁寧なお手紙を頂戴し、花を摘み、生ける体験を通して、子どもたちが意欲的に取り組んでいたこと、友だち同士で作品を見せ合いながら自然と会話や対話が生まれていたことを共有していただきました。
現場の視点から寄せられたこうした言葉は、花育が単発の体験で終わるものではなく、子どもたちの感性や関わる力に働きかける教育実践であることを示しています。
花育は、生きる力の土台を育てる実践
季節の植物に触れ、五感を使って向き合う体験は、その場限りで終わるものではありません。
目には見えなくても、その感覚は子どもたちの中に蓄積され、これからの人生のどこかで、自然を感じる力、自分で選ぶ力、他者と関わる力として立ち上がってくるものだと感じています。
自然との関係を取り戻すこと。
自分の感覚を信じること。
違いを認めながら対話すること。
それらはすべて、これからの社会を生きていくための土台です。
花育は、特別なイベントとして一度きりで終わらせるものではなく、保育園、幼稚園、学校、地域施設など、さまざまな教育現場に無理なく取り入れることのできる実践です。
自然体験、感性教育、情操教育、地域資源活用、文化継承といった観点からも、地域や教育の現場と高い親和性を持つ取り組みであると考えています。
今回のこのはな保育園での実践を通して、花育が子どもたち一人ひとりの未来を支える「感性の土台」となりうることを、あらためて確かに感じることができました。
このはな保育園の園児のみなさん、園長先生をはじめ先生方、このたびは貴重な機会を本当にありがとうございました。

【 花育・文化体験プログラムのご相談について】
美榮が行う花育では、保育園・幼稚園・学校・地域施設・自治体事業などを対象に、
植物や日本文化に触れる花育・文化体験プログラムの企画・実施を行っています。
自然との接点を取り戻し、感性・主体性・対話を育む時間として、各地域や現場の目的に応じた内容設計が可能です。
地域資源の活用、情操教育、文化継承、地域交流の観点からのご相談も承っております。
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